おはようヘミングウェイ

想う 観入る 書き表す そして存在が生まれてくる

超常現象の詩と真実

目次は「あなたの知らない世界へ」から始まる。次いで7章構成となっている。占い師のバケの皮をはぐ、幽体離脱の真実、念力のトリック、霊媒師のからくり、幽霊の正体、マインドコントロール、予知能力の真偽といった具合に興味をそそる内容となっている。英国ハートフォードシャー大学教授、リチャード・ワイズマン博士の著書「超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか」は、わたしの知らない世界のからくりを解き明かしてくれた。

博士の名前がいい。これがゴーストマンだったら手に取ったろうか。冗談はさておき、読み終えた感想は、これは脳科学の本だということだ。怪しげで、謎めいて、時におどろおどろしい世界から繰り出される「アンビリーバブルな事象」に立ち向かい、腑に落ちる論理で読む者の目を開かせる。シャーロック・ホームズばりに事象の検証から真実を明らかにし、犯人の手口を暴いていく。脳の願望、脳の思いこみ、脳の誤作動などが見えないものを見てしまう背景となっているのが分かる。

博士は言う。「ヒトの脳は『自分が見たいもの』しか認識できず、『意味のないもの』にも意味を見い出してしまう。その錯覚を利用すれば、誰でも『百発百中の占い師』になれる」。あるいは「脳はつねに『選択』をしている。目に見えているものでも、認識できることはごくわずか。その虚を突くトリックで、あなたも『念力』を演じられる」。さらには「『波止場の倉庫に幽霊が出る』インチキ話の噂を流してみたところ、次々に『目撃証言』が集まった! 人はかくも暗示にかかりやすく、騙されやすい」

先だって、転倒による骨折で入院中の女性をお見舞いで訪れた際、「あなたが花を持ってお見舞いに来る夢を3日前に見た」と言われた。わたしは驚いた。当初、お見舞いの際には花を持って行こうかと思案したからだ。その後、花よりだんごだろうと、しょうがせんべいに変えたのだ。これは予知夢なのだろうか。博士によると、こういうことになる。「統計学の『大数の法則』とレム睡眠のメカニズムを知れば、予知夢など存在しないことがはっきりする」。ばっさり、一刀両断である。女性が語るロマンチックな予知夢の話は木端微塵となった。

幽霊などの正体が科学の力で解明されて、ロマンなき世になってしまうと嘆く人たちに博士は呼びかける。幽霊なんかより、はるかに素敵な世界があるではないか。その世界とは目の前に広がる現実。その中にこそ、もっと素晴らしいものがあるというわけだ。念力や予知夢という詩の世界より、センス・オブ・ワンダーが見い出す真実の世界がどんなに魅力的であることか。博士の著書を閉じて、窓の外に目をやる。鶯がテレビアンテナの上に止まって鳴いている。ホーホケッケッケッキョ。春本番が来るにはもう少し時間がかかりそうだ。太陽が照る素敵な世界が目の前に広がっている。がんばれ、鶯よ。