おはようヘミングウェイ

想う 観入る 書き表す そして存在が生まれてくる

マイブラックジャック

精神疾患はまだお世話になっていないが、心臓、内臓、皮膚科の掛かり付けがいる。

作家の島田雅彦が鼻髭をはやした風情の心臓外科医には、命を預けたと言うか、心臓を預けた関係でもある。私自身よりはるかに私の心臓の状態、形を知り尽くしている。いつ突然死してもおかしくないと診断された私の心臓を救ってくれた「救心の主」だ。「あなたの死亡診断書はわたしが書きますから」とまで言われている。「遺言書は作成してないが、死亡診断書は予約済み」。粛々と人生計画作成中。

内科の先生は心臓の先生の先輩となる。医学部での上下関係は医者となっても続くらしい。心臓の先生は勤務医だが、内科の先生は開業医。心臓の先生いわく「先輩と違ってわたしは開業する時期を逃してしまった」とか。呼吸器が専門の偉い内科医なのだが、会話をするたびに?がしばしば。

事例その一。「これはすごい薬なんですよ。長嶋監督やオシム監督は不整脈から脳梗塞となったんですが、この薬を事前に飲んでいたら倒れることもなかったと言われているんですよ」
「先生、それは心臓の薬ですか」
「そうそう。昨年発売されたものでね。脳と心臓、それに腎臓にもいいんですよ」
「どうして1つの薬で脳と心臓と腎臓にいいんですか」
「それはですねー。説明するのが難しいんですよ」
「なんとか教えてください、先生」
「うーん、これが簡単に説明できないんだな」
「先生、そこをなんとかお願いします」
「うーん。……」

事例その二。「先生、口の中の粘膜の一部が痛いのですが、口内炎でしょうか」
「そうそう、口内炎ですね」
「どうして口内炎ができるのですか。先生」
「うーん、いろいろ原因がありますからね」
「例えば、どんなことがあるんですか」
「虫歯の人に多いんですよ」
「虫歯は1本もないんですが」
「うん? 虫歯がない。それじゃビタミン不足の人に多かったりするんですよ」
「ビタミンもサプリメントで十分摂ってますが」
「うん? 摂っている? それじゃ野菜不足の人に多かったりするんですねえ」
「無農薬の新鮮野菜をいつも食べてるんですが」
「うん? 食べてる? ……」
「先生、教えてください」
「うーん、原因はですねえ、なかなか難しいんですよ……」

先生が明確にして納得のいく返答ができなくても、わたしは先生を信頼している。もらった薬は確かに効いている。


皮膚科の先生は女医で開業医。ショートカットに香山リカ風の眼鏡を掛けている。ゆで卵の白身みたいにお肌がつるつる。葉巻並みの万年筆でカルテに書き込む所作が絵になる。「指輪による金属アレルギーですね。治ったように見えて、また出てきたりするんですよ。けっこうしつこいですね。これは」。診察結果より万年筆のメーカーがどこなのか気になる。モンブランじゃないなあ。国産なのかな。この皮膚感覚はいつまでも治らない。